お気に入りのあの店

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W杯優勝チームのGKが教えるサッカー教室と世界有数のピアニストが教えるピアノ教室。 全国各地から小中高生が我こそはと集まってきた。 家が職場になったお父さんとお母さん。葉留ちゃんと私は地元から通える大学しか受けさせてもらえなかった。 ふー君は私のお守り(?)をお父さんに頼まれたらしく(憧れの人物であるお父さんの頼みは絶対に断らない。)伯父様の反対を押しきって私と愛知のN大に進んでくれた。 「着きましたよ。」 月島グループ本社。100階建の巨大ビル。新入社員1200名の入社式が始まった。 「おい、あれが社長の息子らしいぜ。」 「じゃあ、隣にいるのがあの嶋田さんか?」 「俺サッカーしてたから親父さんとお兄さんの大ファンなんだよな。サインとかもらってくれないかな?」 「いやいや、それよりあのGAKUTOと舞花が兄弟なんだよね。」 「あいつら特職らしいぜ。」 「どうせ身内贔屓だろ。」 はぁ、ため息しかでない。葉留ちゃんを除いて超有名人なうちの家族。新しい学校に行く度にこのような雑音のオンパレードだ。 私の目から涙が出そうになる。 不意に肩を引っ張られてポフッっと胸に顔を埋めることになる。 「うわぁ、大胆。」 「ちぇ、彼氏もちかよ。」 「社長婦人狙ってたのに。」 そう、雑音に堪えられず、泣きそうになる私をいつも抱きしめてくれるふー君。1200人の同僚が見ていようが、お構いなしに私を抱きしめてくれた。 「みんな見てるよ。」流石に恥ずかしい。 「穂乃ちゃんの涙は誰にも見せないって言ったろ?」 「いつもありがとう…。」って言って気づいてしまった。 ふー君に彼女が出来ない理由。小中高大学の入学式。今日のように抱きしめてくれたふー君。みんなの前で平然と抱きしめられる私は誰が見てもふー君の彼女にしか見えないじゃんか。 「ふー君ごめんね。」「何が?」 「ふー君彼女できなかったの私のせいだよね?」 「なら穂乃ちゃんに彼氏が出来ないのは僕のせいたね。」私を見てニコッと笑う。 「そうね。」って私は再び彼の胸に顔を…。 「はーい、そこの二人。そろそろラブシーン終了してくれるかな?時間も押してるんたけどね。」 えっ、凄く聞き覚えのある声。
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