54人が本棚に入れています
本棚に追加
彼が手を下ろしてしまえば
もちろんその場で確かめる術などなくて――。
僕は最後まで出席を取り終えると
(どうしよう……)
授業開始のチャイムと同時に
ただ呆然と教室を出るほかなかった。
仕方なく――。
名簿を抱いたまま
後ろのドアの影から机に突っ伏している男を再び覗き見る。
(本当に……あいつがテヨンか?)
必死であの日の彼と照合するも。
寝癖だらけのぼさぼさ頭に
度の強そうな黒縁の眼鏡。
上履きの後ろをだらしなく踏んづけ
猫みたいに背中を丸めて眠る。
あの男が――?
最初のコメントを投稿しよう!