第2章

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さすがに――盗られたとは言えなかった。 昨日一昨日と僕は『クム』に足を運んだ。 店にテヨンの姿はなかったが 代わりに気のいい店長が しどろもどろの僕を店に招き入れ 頼んでもないのに酒の相手をしてくれた。 だけどもちろん 事情を説明する勇気もなく――。 常連らしい女性客ばかりの居心地の悪い店で 両日とも1杯2000円のビールを飲んで 僕はすごすごと帰ってきた。 そしてあの日の彼に ほんの少しの善意でもあれば 財布だけでも警察に届けるかと――。 紛失を装い怖々警察に電話したのが今。
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