第2章

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あの日。 あの後、路地裏で――。 『あーあ、飲み過ぎですよ。残念』 事が始まる間際。 僕は予想よりだいぶ早く酔い潰れたんだった。 『待って……』 『足が立たないんじゃできないでしょう?』 すがるように抱きついたテヨンの目は 爛々として冷たく 『また今度、ってやつですね?』 まさにやっつけ仕事を終えた人間のそれだった。 『ンン……』 『お代は頂いて行きますから』 そして 朦朧とした意識の中。 テヨンが僕の内ポケットから 財布を取り出すのを見たのが最後。 『風邪ひかないで下さい』 きっと最後の憐れみ――。 テヨンは僕の前をしまい 適当にワイシャツの裾を入れると 路上に置き去りにして去って行った。
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