第2章

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「須賀先生――もう授業が始まりますよ」 トイレの個室を出たところ 学年主任の谷という男が声をかけてきた。 「緊張で腹でも壊しましたか?」 「え……」 僕がなかなか出てこないので様子を見に来たんだ。 「ええ、まあ」 言い訳するのも面倒なので 洗面所の曇った鏡越し愛想笑いで頷いた。 「まあ、無理もないでしょうな」 谷は僕の隣に並ぶとぺったりした七三頭と 時代錯誤なループタイを気にしながらわざとらしく笑った。 「あんたが勤めていた学校と比べりゃ、ここは天と地ほど差がある。そうでしょう?」 「そんなことは……」 「いやいや、長い事ここにいる人間が言うんだから間違いないよ。それにしてもなんでこんなとこに飛ばされて来たんだか――私は詳しく聞いちゃいませんがね」
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