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「須賀先生――もう授業が始まりますよ」
トイレの個室を出たところ
学年主任の谷という男が声をかけてきた。
「緊張で腹でも壊しましたか?」
「え……」
僕がなかなか出てこないので様子を見に来たんだ。
「ええ、まあ」
言い訳するのも面倒なので
洗面所の曇った鏡越し愛想笑いで頷いた。
「まあ、無理もないでしょうな」
谷は僕の隣に並ぶとぺったりした七三頭と
時代錯誤なループタイを気にしながらわざとらしく笑った。
「あんたが勤めていた学校と比べりゃ、ここは天と地ほど差がある。そうでしょう?」
「そんなことは……」
「いやいや、長い事ここにいる人間が言うんだから間違いないよ。それにしてもなんでこんなとこに飛ばされて来たんだか――私は詳しく聞いちゃいませんがね」
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