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不安でしかなかった撮影は、5人だけで行われた。
梶本、俺、カメラマンは夏目社長の旦那さんで、アシスタントとして動いていたのは、八巻さんと夏目社長だった。
撮影場所は2ヶ所。人目に付かないように、事務所の屋上と、梶本の部屋だ。
俺はただ、梶本の隣に立っていただけ。その間も、普通に話をしたり、笑ったり。「好きにしてていい」と言うのが指示だと言うのなら、指示通りにやりきった。
撮り終えた写真が掲載されるのは、2週間後。
女性誌の巻頭で、特集を組まれるらしい。
「利和君、ありがとう。いい写真が撮れたわ。」
夏目社長は、満足そうにデータを確認していた。
帰り支度をしていると、夏目さんの旦那さんに声をかけられた。
「はい、これ。今日の記念に。
綺麗に撮れてるでしょ?
プレゼントしようと思って、こっそり撮っておいたんだ。」
渡されたのは、一枚のポラロイド写真。
顔を寄せて笑い合う、梶本と俺の横顔が写っていた。
決して雑誌には載った事のない、リオンの時には見せない、梶本の笑顔だった。
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