208人が本棚に入れています
本棚に追加
このまま、ばっくれて帰っても良かった。
インターフォンを押して「俺」とだけ告げると、扉が開く。エレベーターを待つ間も、悩んでいた。
少しだけ、昔の恋の余韻に浸ったって、いいじゃないか。今日を逃せば、この先、会うことさえも無いかもしれない。
そうやって、自分を正当化して、叶わない想いを隠しながら、梶本の部屋に戻って来た。
「お帰り、どうだった?」
「あー、ダメだって。新しいのにしてきた。」
「教えて!」
「何を?」
「番号!アドレス!連絡取れるヤツ全部。」
画面の中で見てきた『リオン』とはかけ離れた、昔のまま、少し強引で、優しい梶本が目の前にいる。
懐かしさと嬉しさが相まって、擽ったいような気持ちになる。
今でも、やっぱり好きだ、と思う…。
最初のコメントを投稿しよう!