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お互い、記憶を無くす程ではなかった。
ただ、色々と喋りすぎたみたいだ。
今の俺の状況を。
ピザを頼むのは忘れていて、缶詰めや、スナック菓子をつまみに、夜更けまで話していた。
ふと外に目を向けて、呟いた。
「月ってさ、黄色だと思ってたんだけどさ、あれって、オレンジだよな。
なんか、旨そうじゃねぇ?」
「確かに!黄色ではないよね!
なんだろう…。シロップのかかったパンケーキ?」
「あー、そんな感じ!
俺、月って好き。なんか優しいから。」
この時、梶本がどんな顔してたかなんて、覚えてない。
ネオンに星は消され、明るい藍色の中に浮かぶ、甘い滴の落ちそうな月を見ていたから。
4本目のボトルを空にした頃には、日付を越えていた。
「さ、そろそろ寝ないとね。
利和は、そのまま寝てていいからね。
じゃあ行こうか。」
俺達は今夜、一緒に眠る。梶本が俺の傍なら眠れそうだと言うから。
いつもはウトウトしては目が覚め、またウトウト…それを繰り返していると言う。
熟睡出来ないのだと。
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