今宵も月はオレンジ

抱枕

喧嘩をして出来た傷なんて、自慢できるものではない。
視線を感じて、顔を上げると、逸らされる。
悪意のない好奇の目に晒され、煩わしく思っていた。

今夜、仕事が終わったら、飯田の部屋に荷物を取りに行こう。
出来れば、顔を会わせたくないが、それは運に任せるしかない。
タクシーを使えば、一度で運び出せるだろう。

今日は、梶本も帰りが遅くなると、言っていた。

本当に、梶本の好意に甘えて良いのか…。
交換条件として出された事は、実際に効果があるのかも、疑問だ。

仕事とは全く別の方向に、思考は傾いて行った。