208人が本棚に入れています
本棚に追加
地面を蹴る音が近づいて来て、寝たフリで遣り過ごそうと、目を閉じた。
足音は俺の横で一旦止まり、すぐにまた、去って行った。
「見てんじゃねぇし。」
心の中で毒づいて、まだ痛みの残る身体を起こした。
帰るか…っても、駅はどこだよ。
スマホを出して、嘆息がもれた。倒されて割れたらしい画面は、鈍く光るだけで、何も映さない。
人の気配を感じて振り向くと、ロードワークの途中なのか、フードを深く被り、肩で息しながら、背の高い男が近づいて来た。
「良かった!動けるんですね。
息してるのは確認したけど、心配で。
あ、これどうぞ。使って下さい。」
コンビニの袋の中には、タオル、湿布、絆創膏とミネラルウォーターが入っていた。
フードの下の顔を、まじまじと見た。
「それじゃ、お大事に。」
走り去ろうとした人を、咄嗟に呼び止めた。
「待って!梶本!」
最初のコメントを投稿しよう!