208人が本棚に入れています
本棚に追加
生活する中で、俺を名前で呼ぶのは限られた人だけだ。大半が『落合さん』と呼ぶ。
リオンの相手の『トシカズ』と、俺が繋がる要素なんてないのだ。
思った通り、会社でもリオンの話が話題になるが、俺の名前に気付く人は居なかった。
土曜日に、梶本の事務所へ行くまでは。
一緒に入っていくのは危ないからと、八巻さんに言われ、梶本はいつも通り八巻さんの車で向かい、俺は単独で向かった。
極秘での顔合わせだったのか、受付で、「社長とアポイントがある」と言っても、なかなか信用されず、困った挙げ句、八巻さんに電話をして、迎えに来てもらった。
一体俺に何の話があるのか、わからず不安なまま、社長さんの前に立った。
背筋の伸びた、モデルのような立ち姿で、俺の前に立ち、名刺を差し出した。
「今日は、落合利和君。
夏目です。よろしく。」
差し出された手を握り、絶対的な威圧感に震えた。
最初のコメントを投稿しよう!