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残された俺は、落ち着かない。
初めて訪れる、家主不在の部屋は、居心地が悪かった。
薦められたまま、シャワーを借りて、汚れを洗い流した。
小さめのだから、と渡された服は、俺には大き過ぎる。
鏡の前に立って、情けない傷だらけの顔に、軟膏を塗り、絆創膏を貼った。
痛みの残る箇所には湿布を貼り、それでも余る時間は、外を眺めて過ごした。
「…何してんだろな、俺は。」
高層マンションの最上階で、窓辺から空を見上げた。
別に、地上から見るのと変わらない。
空を遮る建物がないだけだ。
青くて白い、見慣れた色の空が拡がっていた。
ガラス越しに差し込む日差しが、暖かくて気持ちいい。
することもなく、ぼんやりしながら、いつの間にか、床にうずくまり、身体を丸めて眠っていた。
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