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アウインの行方 4
鈍い音が路地裏に響き渡る。
テンゲルのしなやかな回し蹴りは容赦なく黒装束の男を捕らえて吹き飛ばした。壁に身体を打ちつけた男は「ふぐうっ……」とおかしな呻き声を上げてその場に崩れ落ちる。
「テ、テンゲルだと……? あの鬼神将軍か……」
黒ずくめのうち、一人が焦ったような声で呟くと、他の男たちも動揺を露にした。路地に突如姿を現したテンゲルの名をナージュが呼んだことで、男たちの間に衝撃が走っていた。
「くそっ! せっかくあと少しで聞きだせるところを……こんな場所で将軍と出くわすとは……」
黒装束の男たちは全部で4人いた。1人は壁に背中を預け放心状態となり、他の3人はナージュから離れ逃げ道を探している。
生憎、ナージュを追い込んでいた袋小路の反対側ではテンゲルが仁王立ちして退路を塞いでいた。それを見て、男たちは顔を見合わせる。
「……ちっ!」
男の1人は小さく舌打ちすると、テンゲルに向かって勢いよく突進した。その手に光るもの――短剣が握られているのを見て、ナージュは目を見開き、唇をわななかせる。
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