アウインの行方 1

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 ――よし。これをアイネルさんに見てもらって、鋼の形成の相談をしよう。  ナージュはいくつかまとめた案を羊皮紙に描きあげると、丁寧に丸めて鞄にしまった。そして出かける準備をするため姿見の前に立つ。  ずっと工房では色彩のほとんど無い作業着ばかりだったナージュだが、テンゲルと過ごすようになってから少しずつ女性らしい格好もするようになっていた。  今日は胸元部分が紐締(コルセ)になっている萌葱色のワンピースを身にまとっている。ほっそりとした身体の線が際立つすっきりとした形で、ナージュの優しげで品のある美しさが引き立っていた。もちろんこの服も双子姉妹のお手製だ。お洒落に少しずつ興味を示すようになったナージュに、双子たちはちょくちょく差し入れと言って洋服や装飾品を贈ってくれる。それが面映くもあり、とても嬉しいのだった。  ――帰りに二人の所に寄って相談したいけれど……。今はお店に来るなって言われているし。式の前日までには自分で探し出さないと……。  こうして双子と離れてみて、自分がどれだけ双子姉妹に甘えていたのかを知る。これからテンゲルとの新しい生活を送ることを考えれば、そんなに迷惑をかけるわけにはいかない。ナージュは大きく息を吐き出し、鏡の中の自分を見つめた。  ――きっと見つかるわ。きっと。  鞄を斜めがけにしてから、もう一度左手を掲げて見つめる。  何度見てもそこにはあるべき輝きがなく、ナージュは悲しげに目を伏せた。
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