アウインの行方 2

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 ***  フィードがちょうど鍛冶師アイネルの店の前に着いた時、入り口の扉がキイッと開いた。 「それでは、またお伺いします」  店の中に向けてそう言葉を残して出てきた人物にフィードは目を見張る。まさか先程まで考えていた人と、こんなところで行き会うとは思いもしなかった。 「こんにちは、ナージュ殿。お仕事お疲れ様です」  そう声をかえると、ナージュははっとして顔をフィードの方に向けてくる。男装していた時とは全く違う、女性らしいワンピース姿の甲冑師ナージュは、繊細で透き通るように美しかった。特に好ましい女性が今のところいないフィードでさえ、見た目以上に内面から醸し出される美しさに息を呑む。それは恐らく、テンゲルに愛されているという女性としての自信も理由のひとつだろう。  だが今日は、そのナージュの自然体な美しさに陰りが見えるように感じた。
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