第1回

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 小説向き文章の原則は、正確性を重視する論文向きの文章や、分かり易さを重視する雑誌や新聞記事向きの文章と、根本的に異なります。それは「可能な限り同じ表現を使わない、あるいは間隔を空けて使う」というものです。  この原則があるのは、ギャグ、あるいは詩的な効果を狙わない限り、同じ表現を高頻度で繰り返すことによって、文章が幼稚に見えてしまうのを避けたいからです。  具体例を提示しましょう。 (例1)  僕の名前は太郎です。  僕の年齢は十歳です。  僕は小学生です。  僕の身長は140センチです。  僕の体重は35キロです。  どうでしょうか? この文章は読みやすいし正確ではあるけれども、小説に使うにはためらわれるだろうという事がお解りいただけると思います。何故かというと、どの文章も文頭が「僕が」で始まり、文末が「です」で終わっている、すなわち同じ表現を高頻度で繰り返してしまっているからです。  このような文章を避けることが、小説向きの文章を書くための基本的な方針となります。裏返すと、前述の原則を重視しない人は、いつまで経っても小説向きの文章を書く技術が身につきません。     
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