会議室【使用中】

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 「ヤケドするぞ」と事前にくぎを刺される。待ちきれず、やや乱暴に護りを取り去った。こんな薄い覆いひとつで、身を守れると思っているのだろうか。何のためらいもなく、その全てを開放する。  内側は少しばかり慎重に扱わなくては。端から少しずつ捲り上げ、どこまでならいいか駆け引きを楽しむ。内なる乾きは想像の通りで、「邪魔な小物は取り去れ」だの、「開くのはここまで」だの、「一線を超えてはいけない」などと細かな要求が続く。    用意された液体入りの小袋を見ると、自分の知っているそれよりオイリーな印象だった。過去の経験を踏まえて、冷たいまま浴びせるような稚拙な真似はしない。予め外装ごと温め、馴染みを良くするのも大人の余裕ってものだ。   素手で触ったら火傷するような熱さを内に隠し、しばし焦らされる。  マオカラージャケットの肘の辺りをツンと引き上げ、袖口から覗く腕時計の文字盤を確認。  そろそろ頃合いか……。ここで口元に笑みなんか浮かべては、品性が疑われるな。そう思いながらも服部の心は踊っていた。  静寂を打ち破り、鍵のかかった会議室のドアを叩く音が響く。
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