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「ふふ、都会の女ってほど、大したものでもないよ」
そのあと、望一と美穂は、お互いの生い立ちについて話した。佃美穂は、横浜市内の中小企業の社長の一人娘で、婿捜しに大学に来たと明言した。子供の頃から学業の出来は良い方で、すんなりと公立の進学校に入り、そのあと現役で第一志望の東京のK大学に合格したという。K大学は、私立ながら日本有数の偏差値の高さを誇り、多くの有名人を輩出する。
その大学に同じく、北陸の田舎の進学校からストレート合格した望一も、なかなか優秀な成績ではあったが、生い立ちについては、あまり堂々と明言できぬことが多かった。生まれてこの方祖父母に隠されてきた出生の謎について、このときは望一は心の奥に押し遣って口に出さなかった。美穂には、早くに父母は亡くなったと言って、開業医をやっている祖父母に育てられたとだけ知らせた。
そのような話をしていると、宴の中から一人立ち上がって、叫ぶ者が居た。
「宴たけなわでは御座いますが、とりあえず中締めと言うことで、一次会は終了します。ひとり四千円ね」
そういって、その幹事の同級生の男が金を集め出した。
「美穂ちゃん、二次会行く?」
「ええ? 私、お酒弱いから辞めとくよー」
「そう、じゃ僕、駅まで送ってくよ」
そう言って望一は飲み会を抜け出し、駅までの僅か五分の道のりを、美穂と共に歩いた。
「美穂ちゃんて、高校でもモテたでしょう?」
心なし赤くなった頬にえくぼを作って、美穂は答えた。
「ええ? ぜんっぜん。なんで?」
望一は、すっかり良い気分になって、気が大きくなっていた。
「美穂ちゃん、今まで入学して二年間見てきたけど、とても可愛い美穂ちゃんに心底惚れたよ。僕と付き合ってくれないか」
美穂は、歩みを止めて、望一の方を振り向いた。
「ありがとう。……いいよ、私も森田君なら」
望一の心は、烈火の如く燃え盛った。
「ええ? 本当に良いの? ブラボー、美穂ちゃん! ありがとう!」
「よろしくね」
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