二、平成六年十二月、佐藤護

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 護の母夏子は、護が生まれてしばらくは、前田という男つまり護の実父に養われて、専業主婦をしていたらしいが、護の幼い時分に前田が早々と浮気をしてしまったことを理由に、前田と別れてしまった。しばらくは、前田に養育費を貰っていたとかや、しかしそれもあまり長く続かず、結局、護が小学校に上がる頃には、夏子はスナックでホステスとして働く毎日に成ってしまったらしい。  だから、夏子は護の幼い頃から、あまり料理も作らず既製品ばかり買って食べていた。晩御飯ぐらい、よしや自分がホステスでも、子供のために作ってやるのが普通の親心というものだろうが、こと夏子に関しては、そのような常識は当て嵌らないようであった。  護は、その既製品の晩御飯に慣れていたので、不味いとか味気ないとか思ったこともなく、ただそういうものだと了解していた。学校に行けば給食が食べられるし、朝はトーストで済ますので、特別ひもじい思いもしないで済んだのである。
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