傷口に花束を

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高臣は弱い。 弱いから、大切なものを守れない。 じゃあ、どうすればいいのか。 小さな手の中からぽろぽろと転がり落ちる大切なものを高臣は忘れることさえできない。 ああ、仲間が欲しいと思った。 誰にも手出しをされない位、強固な組織がいい。 半分覚醒していて、半分眠っている意識でそう思った。 どうせ寝ていようが起きていようが忘れない。 だから、決意なんて特別なものではないけれど、それが高臣の切実な願いだった。 高臣の近くで声がする。 「それは諸刃の剣と変わりませんよ。 ……彼の精神が成長するまで……、勿論……。」 よくは聞き取れなかった。 薄ぼんやりと見えた視界には、祖父と朽木医師、それから見たことも無い大人と、泣きそうにこちらを見る高臣と同い年位の子供。 それが、高臣が高臣としての最後の記憶だった。 ◆ 「面白味の無い話でしょう?」 高臣は雪弥を見て笑った。 恐らく、あの時祖父達が話合ったのが今の高臣を作る相談だったのは理解できていた。 安居院はマインドコントロールに長けている一族だ。 その知識を利用して、高臣に一種の暗示をかけたことは容易に想像できた。     
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