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西園寺と話をしなければならない。
そして謝らねばならない。
「出かけるのであれば、人を出します。」
さすがに自分と一緒では話したい話もできないでしょうと高臣は笑う。
断りたかったが一人で行動して迷惑をかけることだけは避けたかった雪弥は頷く。
直ぐに、一人の少年が呼ばれた。
雪弥と同い年くらいだろうか、酷く凡庸に思える少年が頭を下げた。
「彼が一緒に行ってくれるから、大丈夫。」
高臣に言われ、雪弥も深々と頭を下げた。
西園寺に対しては申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
許されることなのかは分からないが兎に角謝らねばならない。
雪弥は「いってきます」と高臣に伝え薄暗い部屋を出た。
**********
雪弥が部屋を出た瞬間、優し気だった高臣から表情がごっそりと消える。
携帯を取り出すと、履歴から那智を選ぼうとして震えている自分の手に気が付く。
相変わらず、無様なままか。
高臣は自嘲するように笑う。
それでも、電話をかける。
程なくして那智が通話に出た。
「今はどこですか?」
「帝の店に居る。」
話さなければならないことは沢山ある。
それはお互いに分かっているにも関わらず言葉にはならなかった。
「猛はどうなった。」
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