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奈緒は着いてくるよう促され、その場から少し離れた路肩に停められた黒い車の中へと乗せられた。どこかに連れて行かれるのかとゾッとしたが、伊織は車を発進させず、車のドアを後ろ手に閉めるやいなやそのまま後部座席のシートに奈緒を押し倒した。
奈緒の学生鞄は肩からずり落ち、シートの下へと転がる。
「ちょっと、待っ」
「暴れんな」
「こんな、人が通るとこで…!」
「外からは車内見えねぇっての」
ばたつく足を押さえ込むように伊織は奈緒の足の上に乗り、制服のブレザーを手際よく脱がしてポイと運転席の方に投げる。ブレザーの下はそろそろ夏仕様なのか半袖の白いシャツで、袖から覗く締まった細い腕も少し透けた体のラインも、伊織の欲を刺激した。
「ネクタイ外せ。」
「え、」
「早く」
圧力に気圧され、奈緒は思わず反射的に従ってしまう。奈緒がネクタイを緩めるやいなや、待ちきれないとばかりに襟元のボタンを外し、露わになる白い首筋に噛み付く。
「ひっ」
息を呑み身をよじるも、シートに肩ごと縫いとめられその奇妙な感覚を無理矢理享受させられる。這わされる舌の生暖かさ。肌を這う唇がちゅ、と音を立てて鎖骨の上に吸い付く。
「!いた……」
そのまま耳に吸い付かれ、あ、と小さく声が漏れた。身をよじるように体が揺れる。
「…は、みみよえーの。」
この前は聞かせてくれなかった少しだけ甘い声。自分の出した声が不覚だったのか、奈緒は慌てて唇を閉ざし耐えようとする。
奈緒にそのつもりはなくとも欲を刺激するには十分だった。伊織は抑えきれない衝動に身を任せ夢中になっていく。シャツのボタンを外し、そのまま奈緒のズボンのベルトに手をかける。
奈緒の頭は真っ白になる。まるで飢えた獣が餌にかじりつくような乱暴で有無を言わさぬ行為に蘇る金曜日の記憶。また同じことをされるのか、あんなに痛い思いをしなければならないのか。
いやだとさけび伊織の胸板を必死で押し返そうともがく。
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