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しばらく世間話をした後、ふと時計を見れば16時を過ぎている。伊織は短くなったタバコを灰皿に押し付け、壁に預けていた背を離した。
「ちょっと外出てくる」
「偵察か?」
「少し、野暮用でな」
「その割にご機嫌じゃねぇか」
男に指摘され、伊織はクッと歯を見せて悦楽的な笑みを浮かべた。この世界に足を突っ込んでから長い彼はポーカーフェイスには自信がある。そんな自身が分かりやすく機嫌良さげな空気を醸しているらしかった。
どんだけあのガキに入れ込んでんだよ俺は。なんて自嘲気味に思う。
先日奈緒を抱いた。妹をダシに脅し、嫌がるのを無理やり押さえつけ、細く締まった体を暴いた。あの華奢な肩、くぐもった吐息、隣室の妹に悟られまいと健気に声を抑え涙を流す姿。今思い出すだけでもゾクゾクする。
今彼は伊織のものだ。伊織のおかげで組織に見つからずにいられる。だから奈緒は伊織に抗うことも逃げることも出来ない。こんなに最高な状況があるだろうか。
伊織は車を回し、野暮用もとい奈緒に会いに向かった。
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