硬直

8/22
808人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ
「なぁ、奈緒。本当に何があったんだよ」 下校の時刻になり、隆明と奈緒は連れ立って教室を出て帰路につく。奈緒は友人と会い授業を受ける中で朝よりは落ち着きを取り戻していた。顔色もましになってはいた。けれど、朝の尋常でない様子はやはり気になった。 隆明のしつこい問いに、奈緒は頑なに何もない、と言い続ける。 今日は一日中その平行線が続いていた。 隆明は校門をくぐりながら奈緒の横顔をちらりと盗み見る。靡く金髪から覗く端整な横顔は、猫のように澄ましている。いつも通りだと言わんばかりに。 隆明はハァ、と浅くため息をついた。奈緒とは長い付き合いだ。昔からこういうモードに入ると強情なのだ。 「…俺には、言えないことなんだな」 「…」 「そんなに俺って頼りない?」 そう言って奈緒の顔を覗き込む。奈緒は少しだけ困ったような表情を浮かべた。 「…そういう言い方すんな。 頼りねぇとかじゃなくて、どうしようもねぇから。」
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!