硬直

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伊織の呼吸は次第に浅くなる。 止まらない、抑えが効かない。 濡れて熱い内壁と舌が伊織のものにもつれ絡み、刺激する。規則的に奥深くへと押し込めばん、ん、と奈緒の喉が鳴り、より一層官能的だ。 伊織の完全に立ち上がったそれは奈緒の口には大きい。奈緒の顔は赤らみ、目尻からは苦しげに涙が溢れている。それでも、初めは混乱し暴れていたが、今は無駄だと悟ったのか抵抗を辞めていた。早く終わることを懇願するように、必死に伊織のものを受け入れ律動に耐えている。 歯を当てるなと言われたからか少しずつ要領も得ていた。唾液で滑りの良くなったそれを唇をせばめて咥え、舌で包み込むようにしている。 手は自身の体を支えるために伊織のジーンズにしがみつき、きつく握り締められている。 快楽と悪趣味な歓びに満たされていた。 ああ、頭がぶっ壊れそうだと伊織は笑う。 やがて、やや汗ばんだ伊織の表情が快楽で切なげに歪み、高まりが射精欲を訴えてくる。 「…っ」 熱が限界に達する前に伊織は奈緒の口を解放した。突然のことで奈緒は下を向きごほ、と軽く咳き込む。 伊織は自身のジーンズを握っていた奈緒の右手を取り、脈打ち熱を持つそれを掌で包ませた。刹那、その手の中で欲望が解放され、奈緒は初めての感覚に身を竦ませる。 指の間から収まり切らなかった白い液体が零れ落ちた。 静かになった車内の中。奈緒は息を整えながら、暫く呆然としていた。
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