詰問

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それは、2人が中高一貫校の中学に上がった時だった。 人の家庭の事情であり、何故奈緒の母が家から出ていってしまったのかは知り及ぶところでは無い。知っているのは、そのことがきっかけで奈緒は父親と不仲になり、少しばかり素行が悪くなった。 父への反抗とばかりに髪を金に染め、授業を時折サボり、夜遅くまで遊ぶこともあった。気だるげな雰囲気もその時から醸すようになったと隆明は記憶している。 決して酒やタバコ、喧嘩などに手を出す不良となったわけではなかった。それでも隆明は、奈緒がそのまま悪い方向へと堕ちていくのでは無いかと不安になったものだ。 そして、隆明が奈緒を好きだと自覚したのはこの時だ。思春期特有のどこか危うげな感じも、成長して伸びた四肢や引き締まり出した体も、よりはっきりとし出した顔立ちも、その悪くなってしまった素行さえ、いつの間にか隆明は目が離せなくなるようになった。 そして、奈緒の彼女に嫉妬するようになった。 『俺、今日彼女の家泊めてもらうわ』 よく奈緒は彼女の家に行き、そのまま泊まっていた。父と顔を合わせたくなかったらしい。奈緒はモテたので、家においでよと誘う女子たちは彼の周りから尽きず彼女も途切れることがなかった。 特に女好きというわけではない彼は、家に帰りたくないその一心で女子のアプローチを受けることを選んでいただろう。それは分かっている。けれど隆明は、そんな奈緒を見ていると胸が痛かった。泣き出したくなるような気分に駆られた。自分がいるのに、自分を頼ってくれれば良いのに何故と問い詰めたくなった。彼女と歩いている姿を見るだけで胸が締め付けられた。 それは友情とはかけ離れた劣情にも似た感情。隆明は奈緒が好きになっていた。
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