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次の瞬間には隆明は奈緒の腕を掴み教室から出ていた。
「おい!どこ行くんだよ!」
「…」
怖い顔をした無言の隆明は腕を掴んだまま、廊下をずんずん突き進んでいく。突然豹変した彼に戸惑い、どうしたんだと声をかけるが、前を向く彼は奈緒の方を振り向くこともなく、どこかへと向かう。そろそろ朝の休み時間も終わる頃だというのに。
こんな様子の隆明を見るのは初めてだった。
彼は奈緒の腕を引いたまま廊下の突き当たりの男子トイレに入っていった。なんでこんなところに、と呟く奈緒は、入るやいなや両肩を掴まれトイレの壁にドンと背中を叩きつけられた。
「ってぇ…な!なにすんだ、よっ」
「…くないだろ…」
「は?」
「何にもなくないだろ!」
壁に押し付けられ逃げ場を失った奈緒は真正面から隆明の顔を見ることになる。精悍な顔立ちは激しい怒りを露わにし、瞳孔は興奮したように開いていた。呆気にとられ、奈緒はしばし言葉を失う。
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