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「なんでそんな怒ってんの隆明…」
「気づいてないのかよ、それ。」
隆明は少しだけ体をずらす。隆明の体によって塞がれていた視界が開けて、トイレの据付の鏡が奥に見えた。奈緒は怪訝な表情で鏡に映る自分を見つめたが、数秒後ハッと目を見開き顔色を変える。
よく見ると、自身の首に赤い跡がついている。自分では気付きにくい場所だが、確かについている。何故、昨日あの後気づかなかったのだろう。
「これは、」
「なぁ、奈緒。
お前今彼女いた?その子に付けられた?
違うよな。…………俺、見たよ、昨日道路の向こうに知らない男がいただろ。あの男を見て奈緒はおかしくなった。怯えてた。俺を帰らせたあと、あの男と会ってたんだろ?」
「ちが…」
「あいつに何されたんだよ。
あいつは何なんだよ。
最近様子がおかしいのはあいつのせいだ、絶対。」
隆明は奈緒に反論の余地も与えずに一気にまくし立て、両肩を掴む指に一層力を込める。奈緒は何も言えず目を伏せる。
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