詰問

8/10
前へ
/65ページ
次へ
「なんでそんな怒ってんの隆明…」 「気づいてないのかよ、それ。」 隆明は少しだけ体をずらす。隆明の体によって塞がれていた視界が開けて、トイレの据付の鏡が奥に見えた。奈緒は怪訝な表情で鏡に映る自分を見つめたが、数秒後ハッと目を見開き顔色を変える。 よく見ると、自身の首に赤い跡がついている。自分では気付きにくい場所だが、確かについている。何故、昨日あの後気づかなかったのだろう。 「これは、」 「なぁ、奈緒。 お前今彼女いた?その子に付けられた? 違うよな。…………俺、見たよ、昨日道路の向こうに知らない男がいただろ。あの男を見て奈緒はおかしくなった。怯えてた。俺を帰らせたあと、あの男と会ってたんだろ?」 「ちが…」 「あいつに何されたんだよ。 あいつは何なんだよ。 最近様子がおかしいのはあいつのせいだ、絶対。」 隆明は奈緒に反論の余地も与えずに一気にまくし立て、両肩を掴む指に一層力を込める。奈緒は何も言えず目を伏せる。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

816人が本棚に入れています
本棚に追加