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食事を終えた二人は、外に出てそのまま歩き出した。 夜風が冷たい。 初めてキスをしたのもこんな夜だったな、と由香里は唇を噛みしめた。 「由香里は大人だな。泣いたり怒ったりとか一切ないもんな。さすがだよ。そういえばそんな冷静なところに俺も惹かれたんだったな」 ……重荷がなくなって、口がよく滑ること――そう言いたいのを堪え、由香里は首に巻いたロングマフラーを鼻まで引き上げた。 「こんな男」を好きな自分に、心底腹が立って仕方ない。 けれど、「こんな男」に泣いてすがるのはもっと腹が立つ。 自分は惚れられた方なのだ。 常に自分の方が上であって当然だろう。 携帯を隠れて見たり、女の影におびえたり、突き詰めたりしない。 堂々とした態度で振る舞う。この先も、ずっと。 角の分かれ道で立ち止まり、短くじゃあねと交わした。 お互い背を向けて歩き出すと、その後はもう、どちらも後ろを振り向くことはなかった。
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