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「で、言い訳は?」
部屋で正座をさせられた翔真は、仁王立ちする真壁に見下ろされている。
低くてよく通る声で責められると、まるで尋問されている気分になる。
「ありません……」
服も着せてもらえず、相変わらず上半身裸のままで、全身に鳥肌が立っていた。
「俺の知らないところで深雪ちゃんに手ぇ出すとはいい度胸だよなぁ。あんなに手ぇ出すなって念押したよな?」
──その通りです。
もう言い訳する気もない。殴るなら殴ってほしい。
そう思いながら目を閉じて自分の罪を認めた。
「まあ……深雪ちゃんが選んだんならしょうがねぇーけどな」
突然、踵を返すようにそう言うと、真壁はベッドに腰かけた。
思いがけない言葉に翔真は耳を疑った。
──今のは…認めてくれたってことなのか?
「だけど俺は許さねぇよ。まだお前に深雪ちゃんをやる気はねぇ」
──ん?なんかこの展開おかしくない?
眉をひそめて真壁の言葉を聞いていると、部屋のドアがゆっくりと開いた。
「あの……」
このか細い声は深雪の声だ。
真壁は慌てて床に落ちていたTシャツを翔真に投げつけた。
翔真はその行動の意味を理解して慌ててTシャツに袖を通す。
深雪がドアの隙間から顔を覗かせると、真壁は翔真に手を差し出した。
「さあ、下に行くか」
翔真の頭の中は真っ白だ。
この手を取るべきか、3秒ほど悩んだが、結局を真壁の手に自分の手を重ねた。
立ち上がろうとした瞬間、握る手の力がきつくなる。
思わず顔をしかめたが、深雪にはバレないように堪えた。
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