snow drop.1

1/3
前へ
/37ページ
次へ

snow drop.1

「こんなトコで何してんの?」 病院の屋上の片隅で、ただボーッと空を見てたら、いきなり、誰かに話し掛けられた。ここは、あまり人は入ってこない穴場なのに。 「…空を見てました。」 ちょっと間抜けな返答だったかななんて思っていると、 「ホントだ。キレイだね~。ここから見る空。」 と、彼女も空に視線を注いでいた。 ちょうど、日も沈みかけていたから、夕日のオレンジと夜になりかけの青がキレイに層になっていて、本当にキレイだったから。 俺は、その景色に見入る彼女を見て、今を輝くアーティスト「未夢」だということに気付いた。 「…貴女こそ、こんなトコで何してんですか?仕事は?未夢さんでしょ?」 っていうか、芸能人相手にこのテンションはどうなんだよ、俺。 「あ~、やっぱ分かっちゃう?」 「分かりますよ。ほとんど毎日テレビに出てるし。気付かれたくないなら、変装してください。」 「気付かれたくないわけじゃないけどね、変装したら逆に怪しいじゃない?ってぃうか、君、全然動じないのね。」 ぅん、自分でもビックリしてるよ(笑) 「…案外、普通過ぎて。」 「サラっと酷い事言うね、君。」 「いや、だって、ここ、結構芸能関係の人、来ますから。今だって、シンガーの雅希さん、入院してるし。」 「あ~うん、そうだね。」 可哀相に、多分、雅希さんは、この病院を退院することはないだろうな。 だって、彼は…。 「だけど、もうすぐ退院できるって言ってたよ、雅希。」 「え?何?雅希さんと知り合いなんですか?」 「知り合いっていうか、彼氏だし。」 「……。」 「……。」 「え!?マジ!?」 「マジ。」 流石に、ビックリした。 ってか、そんな事、俺に言っていいの? 一応、ココの医院長の息子でも、一般人ですよ? 「驚いた?」 ちょっと悪戯に笑う未夢さん。 …なんか、可愛いかも。 「驚きますよ。ってか、言っちゃって良いんですか?マスコミとか…。」 「別に隠す必要ないよ。あたしがデビューする前から付き合ってるんだもん。」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加