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snow drop.1
「こんなトコで何してんの?」
病院の屋上の片隅で、ただボーッと空を見てたら、いきなり、誰かに話し掛けられた。ここは、あまり人は入ってこない穴場なのに。
「…空を見てました。」
ちょっと間抜けな返答だったかななんて思っていると、
「ホントだ。キレイだね~。ここから見る空。」
と、彼女も空に視線を注いでいた。
ちょうど、日も沈みかけていたから、夕日のオレンジと夜になりかけの青がキレイに層になっていて、本当にキレイだったから。
俺は、その景色に見入る彼女を見て、今を輝くアーティスト「未夢」だということに気付いた。
「…貴女こそ、こんなトコで何してんですか?仕事は?未夢さんでしょ?」
っていうか、芸能人相手にこのテンションはどうなんだよ、俺。
「あ~、やっぱ分かっちゃう?」
「分かりますよ。ほとんど毎日テレビに出てるし。気付かれたくないなら、変装してください。」
「気付かれたくないわけじゃないけどね、変装したら逆に怪しいじゃない?ってぃうか、君、全然動じないのね。」
ぅん、自分でもビックリしてるよ(笑)
「…案外、普通過ぎて。」
「サラっと酷い事言うね、君。」
「いや、だって、ここ、結構芸能関係の人、来ますから。今だって、シンガーの雅希さん、入院してるし。」
「あ~うん、そうだね。」
可哀相に、多分、雅希さんは、この病院を退院することはないだろうな。
だって、彼は…。
「だけど、もうすぐ退院できるって言ってたよ、雅希。」
「え?何?雅希さんと知り合いなんですか?」
「知り合いっていうか、彼氏だし。」
「……。」
「……。」
「え!?マジ!?」
「マジ。」
流石に、ビックリした。
ってか、そんな事、俺に言っていいの?
一応、ココの医院長の息子でも、一般人ですよ?
「驚いた?」
ちょっと悪戯に笑う未夢さん。
…なんか、可愛いかも。
「驚きますよ。ってか、言っちゃって良いんですか?マスコミとか…。」
「別に隠す必要ないよ。あたしがデビューする前から付き合ってるんだもん。」
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