snow drop.2

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snow drop.2

屋上での一件以来、未夢さんは、度々、屋上ヘやって来て、他愛もない話をする機会が増えた。 といっても、その大半は、雅希さんの惚気話なんだけど(苦笑) 「ねぇ、瀬菜聞いてる?」 例の如く、雅希さんの部屋に行ったが、寝ていたので、起こしたら悪いと思い、ここヘやって来たと言う、未夢さんは、その寝顔が可愛いと、熱弁している最中だ。 「聞いてますヨ。」 正直、野郎の寝顔の話は興味ないけど。 「…瀬菜は、高校生なのに、落ち着きすぎだよね~。もっとハシャぎなさぃ!」 いきなり、わしゃわしゃと俺の頭を撫でる。 「…!?ちょっ、未夢さん!?」 別にたいしたセットもしていないけど、物凄い勢い…。 「やめてくださぃよ。」 軽く促すと、納得いかない様で、「う~ん」と唸っている。 「大人びたい年頃なのかな。」 独り言のように呟いている。 「雅希さん、曲書いてるみたいですね。病室の前通ると、ギター弾きながら何か書いてるの、よく見かけますよ。」 あまり自分の話題は好きじゃないから、それとなく話題を変える。 「うん。入院中に腕が鈍らないように弾いてるんだって。曲も作ってるみたいだけど、出来るまで見せたくないみたい。退院したら、ふたりでコラボライブもする予定だしね~。」 嬉しそうに笑う未夢さん。 何となくつられて微笑む。 「ふたりで同じステージに立ちたくて、あたし唄、始めたんだ。だから、実現したら、夢がひとつ叶うの。」 「よかったですね。」 「招待したら、来てくれる?」 「チケット買ってでも行きますよ。」 屋上で出会うまで、俺はしっかり、未夢さんの唄を聴いたことがなかった。 ラジオやテレビで流れているのを、何となく耳にしていた程度で。 音楽は好きだけど、どちらかというとバンドの人達のを聴いていたから、アコースティックな感じは物足りないだろうと思ってたけど、実際、聴いてみると、全然そんなことはなくて、何だか懐かしい気持ちになったし、未夢さんの声が凄くきれいだった。 すぐに俺は、彼女の唄が好きになった。
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