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「っ///…何すか…。」
自分でも、顔が赤くなるのが、分かる。
「あはは~、瀬菜、真っ赤~~。」
案の定、思い切り笑われてる。
「…。」
「ホント、可愛いね~。」
「…男が可愛いって言われても、嬉しくないです。」
「何回、呼んでも返事しないからだよ~。思春期くん。」
それとこれと何の関係が…。とは思ったが、実際、未夢さんの声に気付かなかった、俺が悪い。
「…すみません。」
「いぃよ~。あたし、明日早いし、そろそろ帰ろうと思って。雅希も、もう起きてるかもしれないし。」
確かに、気付かないうちに、結構時間が過ぎていたみたいで、うっすら辺りが暗くなって来ていた。
「はい。気をつけて。」
「瀬菜も風邪引かないようにね。もう夏じゃないんだから。
じゃあまたね。」
笑顔で振られた手を振り返すと、未夢さんは、屋上から出ていった。
その後ろ姿を見送った後、ふと、
「あと何回あの笑顔を見られるんだろう。」
そんな事を思った。
雅希さんの容態は、正直、あまり良くないらしい。
俺のあの一言以来、彼女は彼の「生」を信じている。
もし、彼が居なくなれば、彼女から、笑顔は消えてしまうだろう。
あの笑顔は、雅希さんが与えているものだ。
彼の話をする時の笑顔がそれを物語っていた。
どうか、
未夢さんから、笑顔を奪わないでほしい。
それが、例え、俺に向けられなくても構わないから…。
夏に比べると、少し冷えてくるこの時間帯。
もう、すっかり、秋らしく、肌寒い風を感じると、何だか、胸の辺りが苦しくなった。
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