夜明けのブルーにさよなら

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「あ、やっぱり悠さんだった。隣座ってもいい?」 「うん」と頷き終わる前に春嵩は悠の隣に腰を下ろした。そういうふうに自然と距離をつめてくるやり方がこなれている。 「悠さん、何食べたの?」 「ロコモコ」 「俺もそれにしようかな」  にこっと微笑みかけられると自分の意識していない部分が反応して、とくとくと心臓が早まる。悔しいくらいに好みのタイプ。  でも春嵩に惹かれている理由はそれだけじゃない。悠に背を向けて夜明けの道を歩いていく春嵩がどんな顔をしているのか知りたいと本当は知りたいと思っている。 「春嵩くん、いらっしゃい」  悠を出迎えたときとはまったく違う声色で道生がキッチンから顔を出した。 「道生さん。俺もロコモコお願いします」  はいよ、と言ってまた奥に引っ込む。店の常連である春嵩は、ここがオーナーである道生の店であることも知っているし、道生とも飲み仲間だ。  春嵩が悠の目の前で男と別れ続けていることを道生にはまだ言っていない。言ったらまた呆れた顔をするだろう。     
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