夜明けのブルーにさよなら

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 一年半ほど前、常連客となった男の一人が春嵩を連れて店にやってきたとき、一目見て「好みの顔」と思った。  前の男と別れて以来、悠は恋愛に対して及び腰になっていた。夜の街、しかもゲイであることをオープンにして働いていれば、昼間の仕事よりも出会いは多い。  だが今度こそ失敗しないと固く誓っていた。自他共に認めるほど男の趣味が悪く、世間一般で見れば「だめんず」と称されるような相手とばかり付き合い手酷い別れ方をしてきたからこそ、次は穏やかに自分だけを大切にしてくれる相手がいいと決めていた。  春嵩がそうであったなら、と考えたこともあった。しかし春嵩は誘われれば寝る、なんとなく付き合っては相手をあっけなく振る、といったような、つまりは「タラシ」に分類されるような男だった。  それが分かったときには、自分のダメ男センサーのあまりの揺るぎなさにがっくりと肩を落としたものだった。  贔屓目抜きで言っても春嵩は格好いいと思う。格好良くて人当たりも良く、おまけに甘え方もうまかった。計算ではなく自然体でやっているのだろう。カウンターの席に陣取って「悠さん、悠さん」と呼んでくる声も年下らしくてかわいかった。     
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