夜明けのブルーにさよなら

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夜明けのブルーにさよなら

「別れてくれないかな」  開店前の店の中に、深田春嵩(ふかだはるたか)の冷酷な声が響く。テーブルを挟んで彼と向かい合っていた男は、カウンターの中にいる自分からも分かるほど怒りに体を震わせていた。  手つかずのままのアイスコーヒー。グラスの表面にはぷつぷつとした水滴が浮かび上がっては流れ、氷がじわりじわりと溶けていく。 休憩用に買った安売りのボトルコーヒーだが少しもったいないな、そう思いながら竹内悠(たけうちゆう)は洗ったグラスを拭いた。 「どういうことだよ、春嵩。俺たちうまくいってたんじゃないのか。そりゃあこの前のことは謝る。でもそれはお前が」 「だからそういうのが面倒だって言ってるんだ」  別れまいと必死に弁解を続ける男の声を遮るように春嵩がそう言った。はっきりとした拒絶。どちらかが別れを決めてしまった時点で恋人関係なんてすでに終わりを迎えている。  悠はここではただの傍観者だ。この場所を提供しているだけで口を出すつもりはない。 パソコンを強制的にシャットダウンしたときのようにぷつんと終わるその瞬間なら悠にも覚えがある。恋の終わりが脳裏に蘇り思わず顔をしかめてしまった。     
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