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どうして惹かれてしまっているのかと考える。もちろん理屈で整理できるのものではなく全身に張り巡らされた細胞が反応して好きになるものだとはいうことは分かっているが、春嵩が明け方にだけ見せるあのすべてを諦めているような顔の理由が知りたいだけなのかもしれない。
食事を咀嚼していると、他の客の注文を作り終えた道生が再び顔を出した。
「お前はさ、結局のところ好きと捨てられたくないを取り違えてるだけなんじゃないの」
「どういうことだよ」
「普通は好きだから何かしてやりたいって思うわけだろ。お前のそれは捨てられたくないから必死に尽くしてるって感じ。だから相手もつけあがる」
「分かってるさ。だから慎重になってるんだろ。もうこの年だし、結婚っていうゴールがないならせめてなるべく長く一緒にいる相手を選びたいさ。お前だってそろそろ落ち着きたいと思うだろ?」
「俺か? 俺はまだまだ恋を楽しみたいね」
言ってろ、と呟きながらカウンターの上に突っ伏す。
捨てられたくないから必死になる。だってそんなこと当たり前じゃないか。誰だって終わりにするために誰かと付き合うわけじゃない。
最初に付き合った男には「お前じゃなくたっていいんだ」と繰り返し言われ続けた。バイだったせいか、女の匂いをさせながら悠の部屋に来て、無理やり抱くこともあった。
結局ぼろ雑巾みたいに捨てられて、次は間違わないと思った。それでも同じように駄目な男ばかりに惹かれてしまう。
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