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――クールビューティー。
大沢さんを形容するのに、これ以上に相応しい言葉は思いつかない。
もちろん受付業務をそつなくこなす彼女は仕事中は笑顔を見せる。
それでも、言い寄る社内外の男たちをその笑顔でバッサリ切るから、こんなあだ名がついているのだ。
今さら大沢さんへのバースデープレゼントを買いに行くのは不自然なので、俺は諦めてカウンターに戻った。
志木が不思議そうな顔で俺を見る。
「忘れ物は?」
「もういいんだ。それよりチェイサーくれ」
「OK。なあ、美月ちゃんの連れの子もおまえの会社の子?」
「ああ」
「何なの? おまえの会社。もしかして、あんな美女がわんさかいるのか?」
「なわけないだろ。あの2人は別格だよ」
予約席に座って楽しそうに笑い合う2人を見つめた。
薄暗い店内でその一角だけが輝いて見える。
男性客たちが遠巻きに見惚れていても、白川さんも大沢さんもまったく気にならないようだ。それはそうだろう。そんなこと、彼女たちにとっては日常茶飯事なんだから。
毎日、受付の前を通るたびに、大沢さんに熱い眼差しを向ける男たちも一緒に目に入ってきて嫌になる。
それでつい眉間にしわを寄せながら大沢さんを見てしまうから、俺たちはいつも睨み合いのようになってしまうんだ。
「なんか対照的な2人だな。美月ちゃんは黒い艶やかな髪を長く伸ばしていて、メリハリのある身体つきだけど、もう1人の子は背の高いスレンダーな身体に、栗色のショートヘアーがよく似合っている」
感心したような志木の言葉に頷いた。
凛とした見た目に反して白川さんは気さくな人柄だが、大沢さんは見た目通りのドライな性格だと専らの評判だ。
そして、それは無理からぬことだと思う。
白川さんは人事の木村課長に大切に守られているというのに、大沢さんは言い寄って来る男たちを相手に日夜1人で戦っているのだから。
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