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実は女性を抱きしめたのは生まれて初めてだった。
女性にだらしのない父親への反発心ゆえに、結婚までは純潔を貫くという誓いを密かに立てていたから。
別に宗教絡みでも何でもない。
そこまで心を揺さぶられる女性に出会っていなかったというだけのことだ。
一瞬、拒絶するように強く身体を押し返されたものの、俺が誰だかわかると大沢さんの手から力が抜けた。
「今だけ泣けばいい」
俺の一言で、彼女は俺の胸に顔を埋めた。
その刹那、見えてしまった彼女のぐちゃぐちゃの泣き顔に、俺は恋に落ちたのだった。
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