―付録―

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 並木さんは独り言のように、王子に語りかけた。  あの日あったことを。    九条家の主人が何を言ったのか、その時知った。  タイピングする指が一瞬固まった。  ――王子の玩具  どんなふうに訳せばいいのか戸惑って指が止まり、王子の視線が私に向けられた。  ――妊娠しないから、男の自分があてがわれた  そう、彼は言った。  私が、彼を玩具として利用していると、九条の狸オヤジに吹きこまれたらしい。    愛人にさえなれない、跡腐れない使い捨ての、ただの玩具としての自分。    それでもいいと、愛されなくてもいいと。  たとえ玩具としての存在でも、少しでも優しくしてもらえれば幸せだと、彼は心の声を言葉にした。  ……王子には伝わらないと思いながら。  それを訳しながら、私は王子を観察した。  真っ白い肌がうっすらと赤みを帯びたように見えた。    二人はたどたどしい日本語と英語で、互いの気持ちを伝えあう。    とりあえず、一難去ったらしい。  私は、さっさと退散することにしよう。 <了>
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