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愛すべき人生
数年間の、『わたしの全て』だった。
でも、彼にとっては、大切なものを守り続けるために必要な『息抜き』だった。
そう思い知らされたのは、つい最近。
彼のブログに辿り着いた。
私が知らない彼の人生において、『私』がどんなふうに紹介されているのか、楽しみだった。
しかし、すぐに私は愕然とすることになる。
そのブログには、彼の「愛する人」へのあたたかくて切ない一途な思いが綴られていて、およそ2年間に及ぶその回想録の中に『私』の存在はただの一言も登場していなかった。悔しさがあふれてきた。
すぐに確かめたい。
『私』ではない理由を。
実際には行ったことのない、けれども地図では何度も確認したことのある街を訪れた。
彼に見つかることを恐れつつも、心の何処か片隅では楽しみにしている自分をはっきりと自覚しながら、歩を進める。
彼は、20年という歳月で初老という表現が似合う姿になっていた。その隣には、やはり同じ雰囲気の女性が…。
瞬間に感じた「敵わない」という印象。
私は単に「優先順位の高い居場所」が欲しかっただけなのかもしれない。
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