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「お見事です」
2発分の発砲音が店内を震わせた。
反響に満足そうな顔で自慢の豆袋を抱えて店主が姿を現す。
その後ろから無表情な男が1人続いて現れ、中年男性の亡骸を無造作に抱えてまた奥へと消える。
「落ち着いて飲めないものでしょうか」
「あなたが賞金稼ぎなど辞めてしまえば良いだけだと思いますが」
「それは無理です、この仕事は私の天職なんですから!」
「ならば諦めるのですね。
……あなたを追って来る賞金稼ぎ達の後始末をするこちらの身にもなってもらいたいものです」
困り顔で溜め息を漏らす店主を他所に、にっこりと笑い温かなカップを手に取って息を吹き掛け湯気を揺らす。
私にとって寛ぎを楽しむためのお気に入りの場所。
一口含めば芳しい薫りと苦味、そして僅かな酸味が荒んだ神経を凪いだモノへと変えてくれる。
「───おいしい……」
ガラス扉の小さな鈴の音が強張った顔の来客を告げてくると、店主が張り付けた笑顔で出迎える。
できるなら、この店では穏やかに過ごしたい……
そう思いながら再び握り慣れた銃に手を添える。
~fin~
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