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「寛ぎたいんだけどな……」
呟きながらカップの縁を指の腹で撫でると同時に、荷物の中で手に触れたグリップを握り締める。
背高い椅子を回転させて振り向き、視界に男性が同じく銃を向けてくるのを捉える。
ほぼ同時
いや、それでは傷を負ってしまう。
私はここで芳しい薫りで満たされる時間に浸りたいのだ。
怪我を負ってしまっては台無しとなる。
……痛い思いもしたくはない。
迷いなく一直線に男性の頭部を弾丸が貫く様を見届ける。
私の髪を相手の弾が掠め、背面に整然と並ぶ陶器やグラスの棚へ填まり混む。
木目を傷付けはしたが、美しい食器を砕かずに済んだ事は幸いだ。
「名前を売り過ぎたかな?」
呆れともとれる溜め息を吐き、自嘲してカウンターに向き直る。
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