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1.長田邸(プロローグ)
◇
港町、神戸の東に小さな古城を彷彿とさせる洋館が建っている。
大きな門の支柱に埋め込んである重厚なプレートには横書きの英文字で「NAGATA」と浮き彫りで書かれ、その下に日本の漢字「長田」が併記されている。
人間一人の力では重くて開閉ができないような門の脇に小さな通用口があり、中の住人は大事な客が来ない限り普段この通用口を使用する。
中に入ると綺麗に敷き詰められた石畳の小道が洋館の玄関に向って真っ直ぐに伸びている。小道の両脇には春になれば綺麗に咲くであろうと想像させる桜の木が立ち並んでいる。
日本を愛し続けたこの家の本来の主人が植え込めさせた木々だ。
小道を抜けるとゴルフでも出来そうな広大な芝生が目の前に現れる。芝生の上にはお茶会等をするためのお洒落なテーブルや椅子が置かれたスペースが点在し中央には大きな噴水がありその周りを綺麗な花壇が囲っている。
庭の植木や花壇、芝生などは全て丁寧に手入れされていて家を管理する人の質が容易に想像できる。
門からここまで歩いて来ると「和」から「洋」へと、辺りに漂う空気までが季節のように変わるのを体で感じることができる。
そして、それらを全て見下ろすように大きく構えているのは三階建ての大きな洋館だ。
もう少し大きければちょっとしたホテルでも運営できそうな構えだ。
洋館であるのに「和」の趣きがある・・
そんな家が長田邸だ。
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