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「あ、うん。」
それはこちらのセリフだ。
まさか無事だったなんて思いもしなかった。
「どうしたの?
私がわからない?」
土に汚れた走りにくそうなロングスカート、インナーに白のタートルネックも薄汚れており、ピンク色のカーディガンもほつれまくっているし、ボロボロだけど…
間違いない。
夢野草子だ。
すごく心配した。
それどころじゃなかったけど、心の何処かでダメだと思っていた。
「バカァ!」
「?!」
最初にでた言葉がそれだった。
「無事だったなら、すぐに連絡しなさいよ!
どれだけ心配したか!」
大丈夫?怪我してない?
そんな気持ちとは裏腹に、罵声ばかりが口に出る。
「ごめんね。
街に降りれなくて…。
連絡出来なかったの…。」
しゅんとする草子の姿が歪んで見える。
そうか私は今泣いているんだ。
「うっ。ヒック…うー。」
「泣かないで!
さえちゃん。ハンカチ……。
あ、汚れてて……。」
「いらないわよ!
よかった……。無事で……。」
私は捨て猫の様に汚れ切った草子をぎゅっと抱きしめ声を殺して泣いた。
「さえちゃん。
ごめんね。今は泣いている場合じゃないんだ。頂上めざそ?」
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