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泣いている私を抱きしめ返そうとした様だが、草子も今現状を理解しているのか、肩を掴み私を引き剥がした。
「うん。そうだね。
行こう。」
「頂上までもう少しだから。」
私と草子は、登り始める。
途中川が流れて降り、道を阻まれても、崩れた道のせいで急な崖を登らなくてはいけなくても、二人だから頑張れた。
「後もうちょっとだよ!」
「うん!」
私は草子に励まされながら、たどり着いた頂上付近に祀られた鳥居まで来ることができた。
「やった!やったよ!
頂上だよ。」
「うん!私、ここで待っているから。
境内の狛犬が咥えている玉を砕いてきて!そうすれば、この現象に終止符が打てるよ!」
「え?一緒にいかないの?」
ここまで一緒に登ってきたのだから、置いて行くのも気がひける。
「うん。実はね。
崖を登った時に…」
草子がロングスカートをたくし上げ、足を見せる。
「!?ひどい。
なんで言わなかったの?」
草子は太ももを大きく切ってしまっていた。
「ごめんね。
迷惑かけたくなかったの。」
私は、その痛々しい傷を前に膝を折ってしまった。
「ごめんね。
気づかなかったよ。痛くない?」
「大丈夫だよ。
それより早く!行って!」
「わかった。」
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