早朝

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「捕まえ…あぁーっ!?」 仏像を捕まえた拍子で仏像を振り下ろし、緑色の玉が激しい音と共に砕け散る。 「やったぁー!!」 玉の破片を腕でかばいながら私は歓喜した。 「この馬鹿者がぁ!!」 怒声に反応し、私は顔を上げる。 怒鳴っているのは、私と同じくらいか少し年上の男の子。 まるで神主の様な格好でおそらくここの神社を祭っている一族の者だろう。 「くそっ!神社が奴らに解放された。 逃げるぞ!!」 「え?どう言う… 待って!友達がまだ鳥居のところに。」 私の手を引っ張る男に、抗いながらも力ではやはり勝てずに為すがままになる。 「せめてもう一つの玉だけても!」 「痛い!放してよ!」 黄色の玉を取り、懐にしまうと今度は神社の中に連れて行かれる。 「準備が足らぬ! おい!そこの御幣(ごへい)を持て!」 「ごへいってなによ!」 「お祓いの時につかう棒だ。」 「これ?」 「あと、ご神体は…あるな。 いくぞ!」 「ちょっと!」 またもや手を掴まれ、境内へと飛び出す。 だが、男の足はそこで止まった。 「さえちゃん!」 「草子!」 境内に草子が立っていた。 迎えに来てくれたかの様に私を心配そうに見つめながらゆっくりと近づいてくる。 「ダメだ!行ってはならぬ!」
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