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尻が地面から生えている?
それがなによりも違和感でしかない事に後になって気づく。
「え!?」
よく見ると六地蔵の陰に隠れて、尻の石像が鎮座している。
「あ、それは尻蔵様だよ?
さえ…尻蔵様をしらないの?
」
「初めて聞いた。」
私のしらない事は、自慢げに話してくる。
それが、草子だ。
「尻蔵様は、快便、放屁の神様よ。
なんでも、屁が出ずに困っていた殿様が、法師様に頼んで作られたとか、諸説は色々。
村を襲った魔物を尻に封じているとかってのもあるわ。」
「へっ、へぇー。」
「屁だけに?」
うるさい!
誰が上手いこと言えって言った?
私は、複雑な気持ちを胸にしまい込み、尻の石像をじっくりと調べ始めた。
天保5年に作られたんだ。
んー。あ、生暖かい。陽に当たっていたのかな?
木々に囲まれた六地蔵では中々陽は当たらないのだが、一箇所だけ陽が当たる場所がある。
その光が尻蔵様に当たっていたと推測する。
「んー。特に変わった所ないよ。」
「え……。それ……」
振り返りみた草子は、表情がこわばっており、震える指で私の後ろを指している。
「へ?」
背筋に寒気を覚えた私は、ゆっくりと振り返った。
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