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マダムの真意が
温人さんにはわかっているのだろうか。
不思議なほどに
いつも通りな彼の態度に
落ち着いているなと安心すべきか。
それともポーカーフェイスを
貫かなければいけないほど
動揺しているのかと疑うべきか。
わからない。
けれどわたしにできることは
わかっている。
『まあ、惚気?
本当に、信じられないわ。
あのハルトが結婚するなんて』
『そうでしょうか?』
“あのハルト”の部分を
強調するように大げさにマダムが言う。
けれど温人さんは
とぼけたように笑って
軽く肩をすくめて流す。
私の肩を抱く手で
こっそりと制服の上から
なだめるように撫でてきたけれど。
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