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ゾッとするほど赤い唇に
細い指を添えて
吐息混じりでマダムは呟く。
妙に艶のあるその声に
私の心臓はドキリと跳ね上がった。
落ち着け、と
いくら自分に言い聞かせても
走り出した鼓動はちっとも
治まってくれそうにはない。
マダムのリクエストした紅茶は
ヴィジュテラに用意されていたものじゃなかった。
あれはGMの執務室、
つまり温人さんの部屋
正確にはその隣りの秘書室に
常備されているものだった。
温人さんが愛飲している紅茶で
ふたりで暮らすマンションにも
いくつかストックしている。
彼が個人輸入しているものなのだ。
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