315人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
マダムは恐らく知っていたんだ。
温人さんがGMを務めるこのホテルには
必ずその紅茶があることを。
『ゼネラルマネージャーは
明日ここに戻ってくるのよね?』
『はい、マダム』
『あなたにだけ話すけれど
私は彼に会いに日本へ来たのよ』
ゆったりと
私に語って聞かせるマダム・ロッド。
わざとらしさはない。
私に心を開いてくださっているようにも見える。
どちらだ。
『彼が結婚したと聞いて
お祝いをしなくちゃと思ったの』
『お祝い、ですか。
当ホテルの上遠野と、お親しいのですね』
どちらだ。
『そうね。
昔愛し合った間柄を
そう表現するのなら』
最初のコメントを投稿しよう!